Vol.1 今話題の「時間栄養学」とは?!

私たちのからだには、約25時間を1周期とした体内時計が備わっています。体内時計は、1日に起こるさまざまな体の中でのエネルギー産生や代謝反応、消化・吸収、体調などを調節する役割も担っています。例えば、体温が1日で最も高くなる午後2時から3時ごろは、代謝活動も活発であり、瞬発力や持久力などの運動能力も高くなります。

体内時計は社会生活の1日24時間より少し長い周期であることから、毎日リセットしないと社会生活と体内時計のズレが大きくなってしまいます。体内時計をリセットする役割を持つのが、「朝の光」と「朝ごはん」です。朝起きたときにカーテンを開けて朝日を浴びることは脳の体内時計を、朝ごはんを食べることは、消化管や肝臓などの組織に備わる体内時計をリセットするのです。
一方、夜遅くの食事や就寝前に浴びるブルーライトは体内時計の調子を狂わせてしまう原因となります。

このような体内時計の働きに合わせた食事や栄養素の摂取方法、食事を食べるタイミングやその効果についての研究が進められているのが「時間栄養学」なのです。

朝食の果たす役割

朝ごはんは体内時計をリセットする働きがあります。ほかにも、就寝中に消費し枯渇したエネルギーを補充し、体温を速やかに上げる働きもあります。朝食を毎日食べる子どもは、テストの成績や体力テストの成績が高いことが報告されています(図1)。

図1
朝食の摂取と「全国学力・学習状況調査」の平均正答率との関連
図1 朝食の摂取と全国学力・学習状況調査の平均正答率との関連

朝食は、若い世代ほど欠食率が高くなっています(図2)。朝食欠食者は、肥満や2型糖尿病、高血圧などさまざまな健康障害のリスクが高くなることが報告されており、若いうちは健康にみえてもその習慣が長く続くことで疾病リスクが高まると考えられています。

図2
朝食の摂取頻度(性・年代別)
図2 朝食の摂取頻度 性・年代別

ごはんを食べることは、エネルギー消費も促す

朝ごはんを食べることは体温を上昇させ、代謝をUPさせる効果があります。これは、体内に入った食物を消化・吸収する過程や、体内での代謝を行う際に発生するエネルギー(=産熱)によるもので、食事誘発性熱産生(Diet- induced thermogenesis:DIT)といいます(図3)。

DITは1日に消費するエネルギーの約10%を占めるため、例えば1日約2000 kcal消費する人の場合、約200 kcalに相当します。これは、おにぎり1個分に相当するため、1食でも欠食するとDITの低下を招くことになります。朝食に限らず1日3食を基本とした食生活は消費エネルギーを維持することにもつながり、ダイエット中の欠食は逆効果となります。

図3
1日の総エネルギー消費量
図3 1日の総エネルギー消費量

DITを高める栄養素のNo.1はたんぱく質!

DITを高める栄養素のNO.1はたんぱく質であり、続いて炭水化物、脂質の順となります(図4)。

食事は、炭水化物を中心とした「主食」、たんぱく質を中心とした「主菜」、野菜類や海藻類、きのこ類を中心とした「副菜」の構成に整えるとバランスが良くなりますが、朝食時の主菜となるたんぱく質摂取量は、昼食や夕食に比べると少ないことがさまざまな調査研究により明らかとなっています。

朝食のたんぱく質摂取は、DITを高めることにつながり、体温上昇による午前の集中力UPや1日のエネルギー消費量UPにも効果的です。

また、朝食でのたんぱく質摂取は食事の満足感が高まるだけでなく、朝食を食べた後、食欲を抑えるホルモン分泌が上昇することも報告されています。

図4
図4 たんぱく質は食事誘発性熱産生 DIT が高く体を温める効果がある

著者紹介

中村 亜紀(なかむら あき)

広島国際大学
学部・学科:健康科学部医療栄養学科
職階:教授(学科長)
博士(栄養学)・管理栄養士
専門分野:時間栄養学、スポーツ栄養学